●オリジナルボイス
発声法は、これまでご紹介してきたもの以外にも、たくさんあります。
どうか、それら先人たちが開拓してきた発声法を参考にして、あなただけのオリジナルボイスをつくり出していただきたいと願います。
ぼくたちは、あまり発声法について習ってきませんでした。
あまり、と言うか、ぜんぜん、からっきし教わってこなかったですよね?
合唱部とか、ほんの一部の人は、習った経験があるかもしれません。
しかし大多数の人は、家庭でも、学校でも、会社でも、どこでも発声法について何も教わってないです。
ぼくたちは、ほったらかしにされてきました。
ほったらかしと自由は違います。
似ているけど、非なるものです。
ぼくは「喉は人類に与えられた最高のおもちゃだ!」と考えています。
とすると、ぼくたちは最高のおもちゃと遊ぶ、最高のよろこびを奪われたまま成長して死んでいくことになります。
何かを奪われている状態を、自由とは呼びません。
つまり、ほったらかしと自由は違います。
ぼくたちは不自由なのです。
こんな考え方があります。
古武術の極意の考え方です。
「型」というものが古武術にはありますよね?
あの「型」は、ひとつひとつの技の集合体ではないらしいのです。
技の集合体と考えている流派もありますが、流派によっては、はっきり、型の動きなんて実戦では何の役にも立たない、と明言しています。
では、なぜ型を修練するのか?
実戦で役に立たないものを、何のためにくりかえし修業するのか?
わざと不自由になるためらしいです。
いつか将来、自由に身体が動けるように、いま不自由な型に身体をはめ込むらしいのです。
自由になるために不自由なる。
どうやらこれが、古武術の極意とのこと………。
初めてこの考え方に接したとき、まさしく慧眼を得ました。
歌も同じだ!!
いつか将来、自由に歌えるようになるためには、いま不自由に歌う必要がある。
そう会得しました。
以来、「ものまねボイトレ」という、古武術の極意をわかりやすく歌に置きかたものを提唱してきたのですけど…。
そこへパンデミックが起こりました。
世界中で万単位の人が死んでいくさまを見て、心境が変化しました。
それについては、<このページ>に書いたので、機会があったら読んでください。
簡単に言うと、パンデミックが起きた後の、こんな時代に歌を歌う人は「求道者」だ、ということです。
なので、ものまねボイトレのような、おちゃらけたようなものより、もっと求道者らしいもののほうが良いと思いました。
ということで、いろいろな発声法で歌うことを提唱する、このコンテンツ「発声法あらかると」を作ったのです。
これまでご紹介してきた発声法は、古武術で言う「型」のようなものです。
いつかあなたが、自由に、空を飛ぶように思い通りに歌うための、ステップです。
ひょっとしたら、なかには、私はこんな声いらない、ってスルーした発声法があったかもしれません。
しかし、スルーしないでください。
声練屋の、この「発声法あらかると」は、発声法の見本市ではありません。
「型」です。
自由になるための不自由なのです。
これまでご紹介してきたさまざまな発声法、すべてで歌ってください。
1曲、フルコーラスを、単一の発声法で歌いきってください。
おそらく難しいものもあるでしょう。
できない箇所もあるでしょう。
それでもなんとか、自身を追い込んでください。
いつかあなたが空を飛ぶ日まで。
つまり、あなただけのオリジナルボイスを会得する日まで、です。
発声法は、まだまだ他にもたくさんあります。
このWebサイトがきっかけとなって、ひとりでも多くの方が声について関心を持ってくれたならば、これにまさるよろこびはありません。【完】