●シンギュラリティボイス
「シンギュラリティボイス」は声練屋の造語です。
一般的には「ハイラリ」「ハイ・ラリンクス」と呼ばれています。
喉仏を上方にあげて出す喉締め声のことですね。
水道のホースで水遊びした経験のある人ならご存知でしょう。
ホースの出口を細く締めると、水が勢いよく飛び出しますよね?
筒状のものを通過する流体は、出口を締められると圧力が増します。
圧力が高まると、噴出する勢いも増すのですね。
同じようなことが、喉でも起きます。
身体の中で喉は筒状ですからね。
出口を締め、呼気の圧力を高めると、簡単に高い声が出せるようになります。
もちろん限界はありますけと、自然な地声よりもはるかに高い声が出ます。
喉締め声ハイラリは、しかし、教育的な西洋音楽の世界では嫌われています。
良くない声と見なされているのです。
喉締め声は、圧力は高くなりますが、それとは引き換えに、量が減ります。
声量が物足りなくなるのです。
オペラなど、マイクを使わない場合は、声量は重大な問題となるでしょう。
ゆえに、教育的な西洋音楽では、喉締め声は嫌われ続けてきたのですね。
しかし、J-POPで喉締め声は、いたって普通に使用されています。
マイクを使うことが当たり前だからですね。
声量がないため、迫力には欠けますが、繊細さを表現することには長けています。
代表格は、スピッツの草野マサムネさんです。
あの、はかなくて、けなげな、まさに青春をイメージさせる歌声は、繊細な歌声以外では表現できないでしょう。
昔で言えば野口五郎さん、最近なら平井堅さんなどもこの声です。
沈思黙考をいざなう、やさしい歌声で人気ですよね。
色々な声をお持ちのまふまふさんも、基本的にはこの声だと思っています。
こんな素晴らしい歌声を、ハイラリなどと呼んで見下すのは、良くありません。
そこで声練屋では、「シンギュラリティボイス」と呼んで、イメージアップをはかることとしました。
シンギュラリティとは、特異点のことです。
特異点は、すべての価値観がひっくり返る地点ですので、悪い悪いと言われてきたハイラリが、すばらしいという価値観にひっくり返るさまをイメージして名づけました。
まぁ、声練屋だけで通用する用語ですので、今後も「喉締め声」「ハイラリ」などと呼ぶ場合も多々あります。
とはいえ「シンギュラリティボイス」という用語を、おぼえておいていただけると、うれしいです。
シンギュラリティボイスは、喉仏を上げることで発声します。
女性の場合、喉仏を意識することが少ないかもしれませんが、ヒトの身体には喉仏が存在しています。
喉に手をそえて、あれやこれや動かし続けていれば、おのずと見つかると思います。
自然な地声の音高をだんだんと上げていくと、だんだんと喉仏が上がっていきます。
教育的な西洋音楽の先生は、ここで「ハイ! 喉仏を上げない!!」と叱ります。
でも、かまわずに喉仏を上げ続けます。
ある程度の音高を越えてしまうと裏声に変わってしまいますので、その直前に舌根を操作し、裏声にならないようにします。
舌は筋肉のかたまりなのですけど、その多くは舌根にあります。
舌の付け根ですね。
チョロチョロ動く、目に見える舌は舌全体のほんの一部分で、舌の付け根には大量の舌のかたまりが存在します。
ここが舌根です。
舌根を操作し、呼気の通り道を狭くします。
水遊びのホースを締める要領です。
昔、笛のようにピィーピィー鳴るトローチ(飴)があったのですけど、今でもありますかね?
あのトローチを喉にはめ込むイメージでシンギュラリティボイスを出しているのですが…。
今どきの若い人は、笛トローチなんかじゃ遊ばないですかね…。
できるだけ小さな笛をイメージしてください。
低い音ではなく、ピィーとした高い音のなる笛がいいです。
犬笛の超スモール版を想像するといいかもしれません。
その笛を、舌の付け根ではさむようにし、咽頭に据え付けます。
舌と喉のあいだをまるくすぼめるようにして、わずかばかりの呼気の通り道をつくるのです。
ここを通る息が、すべて甲高くなるイメージで歌い続けます。
いかがですか?
シンギュラリティボイスが出ましたか?
まぁ、基本的に喉締め声は悪い悪いと言われ続けてきましたからね。
悪いと言われることをやるのは、意外と簡単かもしれません。
と言いますか、喉締め声とは、ある意味とても自然な声で、教育的な西洋音楽の声のほうが不自然だとも考えられます。
ひょっとしたら、べつに教えなくても、誰でも出せる声なのかもしれませんね。
★声練屋、シンギュラリティボイス動画
→https://youtu.be/tVTuRoaHbLA