<5>高い声の出し方 コンプレッションボイス

●コンプレッションボイス

 「コンプレッションボイス」は声練屋の造語です。
 一般的にはミックスボイスと呼ばれています。

 しかしミックスボイスは、まるで都市伝説のごとく、巷間さまざまに言われています。
 定義が一定せず、またその定義自体にも与したくないものが多いです。
 なるべくならミックスボイスという用語は使いたくないのです。
 なので、「コンプレッションボイス」と名づけました。

 コンプレッションとは、圧縮のことです。
 「コンプレッションボイス」は、呼気を圧縮して出す声、といったほどの意味です。

 シンギュラリティボイスのページでも述べましたが、呼気の圧力を高くすると、高い声が出せるようになります。
 声の高さとは呼気の圧力なのです。

 シンギュラリティボイスでは、喉を締めることによって呼気の圧力を高めました。
 コンプレッションボイス(ミックスボイス)では、声門閉鎖によって呼気の圧力を高めます。

 「声門閉鎖」とは、声帯を閉じることです。

 「自然な地声」をおぼえていますか?
 どうぞ、いま、自然な地声を出してみて下さい。
 声帯は閉じていますか?
 閉じていませんよね。
 自然な地声のとき、人の声帯は閉じていません。

 とはいえ、ふだん声帯の動きを意識したことのない人だとしたら、声帯が開いているか、閉じているかなんて、体感できないかもしれません。
 あるていどの慣れが必要でしょう。

 声帯が閉じている感覚を最も得やすいのが、重い物を持ち上げるときです。
 息を止めて、ひたいに青筋立てて、重たい物を持ち上げたり、離したりを繰り返すと、声帯の開閉を体感しやすくなります。
 しかし、これ、ものすごく健康に悪いです。
 すぐに寿命を縮めるだろうと思います。
 絶対にやめたほうがいいです。

 重い物を持ち上げるでなくとも、息を止めること自体に危険が伴います。
 血圧の上昇をまねき、血管壁をいためるからです、
 脳梗塞や動脈硬化などを誘発します。
 しかし、声帯を閉じるということは、息を止めるということです。
 声帯を閉じたまま息することはできないからです。
 息ができたら、それはそれで、また別の病気だったりします…。

 このほどさように、声門閉鎖には危険が伴います。
 だから本当は、シロウトが気安く手を出すべきものではないのです。

 どうかコンプレッションボイスを修得しようとする人は「覚悟」を持ってください。
 すばらしい声質を手にすることと引き換えに、健康を害する危険性がある。
 それでもあえてコンプレッションボイスを修得するんだ、と。
 そういう覚悟を持っていただきたいのです。

 では、多少、無茶なことを繰り返してでも声門閉鎖ができるようになったとします。
 たとえいっとき声門閉鎖ができても、声帯に呼気を流すと、またすぐに声帯は離れていくことでしょう。
 声門閉鎖を維持できるようにならなければなりません。

 このとき、ブーブークッションをイメージするといいかもしれません。
 ブーブークッションはご存知でしょう。
 風船みたいなところに圧力がかかるとオナラのような音が鳴る、いたずらグッズですね。

 あのブーブークッションの、音の鳴る口の動きをイメージするのです。
 あそこからブーブーと音が鳴るのは、ゴム様の口がつかず離れずの動きをするからですよね。

 なぜ離れないかというと、流体力学的な作用が働くからです。
 たとえば、下唇のあたりにヒラヒラの細長い紙片を固定して、ふぅーと強く息を吐きます。
 すると、紙片が持ち上がってきます。
 これは簡単に実験できますので、ぜひやってみてください。
 気流には不思議なチカラのあることが体感できるはずです。

 声帯も流体力学の作用によって閉じた状態を維持するようにイメージします。
 もちろん、本当は、筋肉のチカラです。
 筋肉が一生懸命にがんばって、やでもか維持できます。
 しかし、これまで何度も述べてきた通り、身体操作においてイメージはとても重要です。
 ぜひブーブークッションを観察して、その発音原理のふしぎさを体感してください。
 紙片が浮き上がるという、先ほどの実験をやってみて、気流のふしぎさを体感してください。
 きっとイメージの喚起に役立ちます。

 声門閉鎖は慣れていないと難しいです。
 とくに高音は難易度が高いと思います。

 低音のコンプレッションボイスには、格段、呼気に圧力を加える必要性がありません。
 ゆえに、低音は簡単なのです。
 この簡単な低音ボイスのことを「エッジボイス」と呼ぶことがあります。
 福山雅治さんや平井堅さんのマネをするとき、出だしの低音を出す際に、よくエッジボイスが使われます。
 ご存知の方も多いでしょう。

 厳密に言うと、エッジボイスとコンプレッションボイスとは別物です。
 とはいえ、低音の場合は、かなり近しい音になります。
 無理して区別することもないかもしれません。

 いったんコンプレッションボイスで高音が出せるようになると、かなりの高さまで出せることでしょう。
 おそらく、J-POPで歌われている歌ならば、ほとんどすべてが歌えるようになると思います。
 ボカロはわかりませんけどね。
 人間が歌える歌限定。
 つまり、人間が出せる高さなら、あなたも歌えるようになる、ってことです。

 いつか、誰もがコンプレッションボイス(ミックスボイス)を身に付けたら、高音が出せることなんて、あたりまえになるんでしょうね。
 そしたら、今みたいに高音競争みたいな歌がなくなるかもしれません。
 逆に、低音競争みたいな。

 歴史は繰り返しますからね。
 フランク永井さんが再評価されたりして!?

 ★声練屋、コンプレッションボイス動画
 →https://youtu.be/ZnULiyuPVl4

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