高い声の出し方<6>サビ甲(さびかん)

●サビ甲(さびかん)

 6つめは、サビ甲(さびかん)です。

 日本の伝統音楽、能や狂言、浄瑠璃などで必ず聴くことのできる声ですよね。
 お若い方にとっては、あまりなじみがなく、また人気のない声かもしれません。
 しかし、情感たっぷりで、日本らしいワビ・サビを感じられる声です。
 知っておいて損はないと思います。

 基本的には喉締め声の一種ですが、シンギュラリティボイスとは発声原理が異なります。
 舌の付け根の筋肉を駆使して、声帯に直接的に働きかけます。
 厳密に言うと「仮声帯」です。

 仮声帯というのは、声帯の上側にある、謎の細胞組織です。
 男女かかわりなく全ての人にあるのですが、なんのためにあるのか解明されていません。
 どんな役割なのか、わからないのです。
 いろいろな仮説は立てられていますが、まだまだ謎はナゾのままです。

 しかし、いろいろな声を出せる人にとって、仮声帯は、とてもなじみのある発声器官です。
 仮声帯を駆使することで出せるようになる声が、たくさんあるからですね。
 サビ甲の声も、そのひとつです。
 医者は、たぶん、そういうことを知らないから、「仮声帯、なんじゃコリャ?」と思うのでしょうね。

 舌の付け根を使い、仮声帯を立たせます。
 喉にファイバースコープを入れて見た訳ではないので、本当に仮声帯が立っているのかは分かりません。
 あくまで体感イメージです。
 この仮声帯をエアリードのように使い、呼気を切ります。

 エアリードは、ご存知でしょう。
 小学校のリコーダーが鳴るのは、このエアリードのおかげですからね。
 口から吐いた息が、あの四角いくぼみで二股に切れて、甲高い音が鳴ります。
 エアリードは、フルートや尺八など、多くの笛で使われてますから、リコーダーを知らない人でも、きっとご存知だろうと思います。

 サビ甲は、仮声帯をエアリードのように使うという、ちょっと難易度の高い声です。
 発声法について、あまり考えたことのない人にとっては、一朝一夕では修得できないだろうと思います。
 昔の日本人ならば、師匠に弟子入りして、何年も雑巾がけをしたあと、やっと身に付けられるレベルの声ですから。

 演歌では、坂本冬美さんがこの声を部分的に取り入れ、歌声に味を加えている名手です。
 声練屋の個人的な好みでは、浪曲の澤孝子さんの声が素晴らしいと思っています。

 伝統的な日本音楽を聴く機会は少ないかもしれませんが、捨て置くにはもったいない技術がたくさんあります。
 日本を再発見してみるのも、悪くないと思いますよ。

 ★声練屋、サビ甲動画
 →https://youtu.be/7qQlFdcGS0s

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